2003年1月28日（火）ソワレ １階Ｆ列８番
＜キャスト＞
オペラ座の怪人：村 俊英 クリスティーヌ・ダーエ：村田 恵理子
ラウル・シャニー子爵：鈴木 涼太 カルロッタ・ジュディチェルリ：河合 和代
メグ・ジリー：秋山 みな子 マダム・ジリー：横山 幸江
ムッシュー・アンドレ：林 和男 ムッシュー・フィルマン：青木 朗
ウバルド・ピアンジ：半場 俊一郎 ムッシュー・レイエ： 松下 武史
ムッシュー・ルフェーブル：川地 啓友 ジョセフ・ブケー：須郷 裕介
･･･今も、覚めやらぬ夢の中にいるようです･･･ずーっとね、胸が痛い。
いや、心臓が悪いわけではない･･･はずだけど。次の検査までわからんからな（笑；）
京都へ通って14回、「･･･やられたっ！」が正直な思いです。
今回１時間前には京都に着いたのに、ごそごそしているうちに開演時間。
今日が私にとって最後の村さんだろうと思ったらたまらなくて、また花屋に行ってたり(^^)；
白いチューリップ・白いトルコ桔梗･･･白尽くめの中に薄いオレンジとカナリーイエローの薔薇で
アクセントをつけてもらいました。
Ｆ列の下手･･･ええ、やっぱり下手が好きなんですね（笑；）
少し傾斜もついてそこそこ前で･･･ここって、実は下手のベストなんじゃないかと思うＦ列８番。
天使像上のファントムも見えるしな〜。
今日のオークション開場は少し淡白だったかな、と。
深見オークショナーの芝居がかった（って芝居だけどさ;爆）閉め口上で、イッキに空気が変わりましたね。
ハンニバル。
河合カルロッタだぁ〜☆
「ロォォォォォォォマッ♪」と歌い上げたあとの「ふふん♪」という表情でまずノックアウトされております。
石井ピアンジを拝見できなかったのがちとうらめしいのですが（苦笑；）
半場ピアンジの艶のあるお声に、体調不良によるお休みではなかったのかな？と。
声自体はお休み前とそんなに変わらないような。
でも、高音の出し方はやっぱり「よっこらせっ！」ってカンジで。
３日間だけのお休みなんてちょっと短すぎだし･･･わからん。
ここで感じたのは、主要なキャストが変わるとやっぱり違和感あるな、ってこと。
まず、秋山メグ。声が低めで、台詞回しもゆっくり目なせいか、動いていても石倉メグのようにちょこまか、
というカンジではないですね。年齢的にも高めに見えるの。
そして、この後もずーっとうならされる横山マダム。
見た瞬間「マダム･･･大きい」（爆；）
もしかしてドレスの裾、下ろしてませんか？裾に折れ目が見えるのはそのせい？
背が高くていらっしゃるんですが、なんだかすんごいテンションが低いマダム･･･
いや、この表現はちょっと違うな。テンションが低いんじゃなくて感情が外に出てこない、
いつも見えない仮面をつけてるような妙に得体の知れないマダム・ジリー。
ここでの全体の空気を感じて、ふと「あ、今日は違うかも」となんとなく思いました。
年末からずーっと感じていた「浮き足立ったような」空気が今日は感じない。
周囲の驚きや恐怖がすんなりと入ってくるカンジです。
村田クリス。常に「ベターな状態」を保てる方なのだなぁ、と。
ただ、やはりそのベターな状態がかすかではありますが少しづつ下降線気味になっているのは
否めない気がします。
そして･･･今日のすべてはこの方のために。
「ブラヴァ･･･」あまやかな声が舞台中に広がって、思わずためいき。
鏡のシーンが･･･ホントによく見えるのです、このお席。
鏡がナナメになってる分、ほぼ真正面状態なんで、スタンバっている村さんがわかるくらい（爆；）
うつむき加減にクリスを招くその姿は、間違いなく「人外の者」を思わせる空気をまとっていました。
The Phantom of the opera。
トランスレーターを歩く今日のダミーさんはいつもの方と違っていたのでしょうか？
てけてけと小走り気味なうえに、少しクリスに引っ張りまわされてた･･･
クリスに手振りで「ちょっと･･･お待ち」なところも浮き足立ってたなぁ。
ダミーでも見てる人は食い入るように（笑；）見てるのよぉ。
ここから、The music of the night まで。
今日は、17日ほど感情移入できなかったのが正直なところです。
村ファントムの動きと、歌と、感情。私の中では微妙に重ならなかった。
ただ、感情はすーっとはいってきましたね。
彼にとってのクリスへの愛は、ここではまだ清らかで、肉体の重み･･･有体に言えば「性」を感じさせない。
輝かしいもの、地底から天を仰ぎ恋焦がれていたものを、自分と同じ高さへと引き寄せた純粋な喜び。
今日はそんなものを強く感じたように思います。
それだけに、仮面をはがされた瞬間は･･･ただ悲痛な叫び。
今日はこころもち、強い怒りにも似た哀しみを感じました。
２度目の須郷ブケー。
今まで私が感じていたブケーのイメージは、勝手に私が作り出したものにすぎないことを
教えてくれてありがとう･･･そう、エンターティナーでお茶目なブケーでもいいのよ、うん（笑；）
で･･･「プリマドンナ」。
言わせてください。
河合さん最高ぉぉぉっ！
ブラーヴァァァァ！！！「プリマドンナ」という名称はまさしく貴女のために。
指先から仕草から目線からセリフのひとつひとつから･･･もぉ釘付けです。
初めて「ピアンジになりてーっ！」（爆；）って心底思いましたわ。
で、耳元で「カーラ･･･」って、ささやくのさ〜♪
まさに、今までで最高のものを見せていただきました。
その興奮のままに「イル・ムート」になだれこんじゃったので、
もぉカルロッタにしか目が行きません（笑；）カエル声さえ愛しいのよ･･･
All I ask of you。
鈴木ラウルの二面性。
クリスには甘く、頼もしく優しい幼馴染であり。
その他大勢には、青年貴族らしい傲慢さを見せつつ、場のイニシアチブを取ろうとしている。
激しいのは相変わらずなんだけど、「熱い激しさ」ではなく「冷たい激しさ」とでもいうのか
そんなものが生まれていますね。自分の「ラウル像」を掴めてきたのでしょうか？
でも、今日のこのシーンでのラウル、クリスを見る表情に時折突き放したような、得体の
しれないものを見ているような眼差しがあったのは気のせいかしら？
天使像の上。
このあたりから、「おっ？」と思うものがありました。
ちょうど、顔の上半分がしっかりと見て取れて。
うつろな眼差しに、心が少しづつちぎれ、落ちてゆくような歌声。
苦しむ様は、ほの暗い色気が感じられて、ちょっと背筋にきました。
幕間。
うう、憧れの方にお会いできて･･･もぉシヤワセ☆
お顔を穴のあくほど見つめちゃってすみませんです、ホント。
マスカレード。
やっぱりね･･･マダムが浮くの（泣；）
せめて、ここでは場の華やかさに飲まれてほしい。じゃないと、次のラウルとのシーンにつながる、
あのこわばった表情が生きてこない。
どうも、ラウルとも息が合わせづらいらしくて、クリスを追いかけるラウルがマダムに腕をつかまれる
シーン、ラウルの方が一瞬、掴まれるの待ってましたからね（苦笑）
で、次のラウルとのからみなんですが。
あの･･･マダムのマイク、生きてましたか？ラウルはちゃんとマイクを通した声が聞こえてるのに
マダムは生声しか聞こえなくて。セリフも１本調子で、なんか上をかるーくなぞって終わってしまった
感がありました。
墓場にて。
村田クリス･･･なんか力強かったなぁ、と（笑；）･･･ってそれだけかい（爆；）
The point of noreturn。
マントの中から激しい息遣いが聞こえてきそうな熱いファントム。
なにかがゆらめきたちのぼるような･･･といえばいいんでしょうか。
クリスが完全にのまれてしまっているようなカンジです。
「クリスティーヌ･･･きみがすべて」
強烈なまでに現実味を帯びた、愛の告白。
クリスがフードを取り払うとき、もたついてしまったのすら、
この想いに飲まれたゆえの仕草としか見えませんわぁ。
ウェディングドレス姿のクリスを連れて戻ってきて･･･
まるで、モノのように乱暴にクリスを放すとき、「はぁっ！」という息遣いが聞こえて。
Music･･･とのあまりな違いが、ファントムの心情をあらわしていて哀しい。
余裕のひとかけらもない、切羽詰った悲痛な想いだけが舞台一杯に広がって。
このあたりから･･･自分でも実のところ記憶が曖昧です。
記憶が曖昧･･･というか、飽和状態でうまく再現できないみたいな。
ひとつ言えるのは、このとき舞台にいたのは「村俊英」という役者でなく、
彼の肉体をつかの間借りて降り立った「ファントム」だったのだと。
わたしはファントムを見、ファントムの心情に触れたのだとそう言いきれる･･･かな？
高井ファントムの見せる、ほの暗い激情とも違う。
観ているほうの心が痛くなる、もういい、やめて･･･と言いたくなるような密度の濃い、重い空気。
心がぱっくりと傷口を開けて。
見えない傷から次から次からあふれ出る血。
なすすべもなく流れ出る血を見やるような眼差し。
でも、表情はほのかに微笑っているんですよ。
近い表情は「泣き笑い」になるのかな･･･その刹那的な表情がまたこっちの神経にくる。
村さんにしては少し珍しいくらい投げやりにベールをかぶせ、ブーケを引っつかみ。
クリスが「醜さは顔にはないわ･･･」と言うシーンで、さらにその表情が
暗く、少しゆがんだ笑いになって。
「クリスティーヌ、そうじゃない･･･そうじゃないんだよ･･･」
そんな彼のつぶやきが聞こえてきそうです。
このあたりから、自分でも信じられないくらい涙腺壊れてました。
後から後からとめど無く流れてくるのを止められない･･･うーん。
クリスもラウルも熱い。けど、もう彼以外眼に入らない･･･いや、
追いかけているわけではないのに、視野に入ってなくても
「わたしはここだ、ここだ」という声が、押し寄せる空気が全身を捕らえるんです。
クリスのキスすら、すでに己の激情に、哀しみに翻弄されているような彼に届いたのかどうか。
指輪を返しにきたクリスに向かったとき、初めて彼はクリスをしっかりと見据える
ことができたように思います。
「天使」でもなく「怪人」でもなく、ひとりの「人間」として「男」として。
彼の唇から零れ落ちたのは、魂の奥底からありったけの想いをこめて作られた
１輪の深紅の薔薇。
「クリスティーヌ･･･ I Love you･･･」
嗚咽をこらえなければならないほど、自分自身が翻弄されたのは初めてです。
高井さんのときだって、ここまではなかったぞ（爆；）
舞台から差し出された手をこわごわ掴んだら･･･おもいっきり降りまわされた挙句、
腕相撲状態になったカンジですね（笑；）もちろんこっちの大敗ですとも。
その白く長い「手」は･･･いまも私の首筋にまとわりついています。
ホントにやられました･･･イイ意味で悔しい。
村さん、ありがとうございました。
…観劇の部屋へ