2003年3月2日（土）マチネ１階Ｎ列21番＜千秋楽＞
＜キャスト＞
オペラ座の怪人：高井 治 クリスティーヌ・ダーエ：村田 恵理子
ラウル・シャニー子爵：柳瀬 大輔 カルロッタ・ジュディチェルリ：河合 和代
メグ・ジリー：安食 智紀 マダム・ジリー：西島 美子
ムッシュー・アンドレ：林 和男 ムッシュー・フィルマン：青木 朗
ウバルド・ピアンジ：半場 俊一郎 ムッシュー・レイエ： 立岡 晃
ムッシュー・ルフェーブル：深見 正博 ジョセフ・ブケー：須郷 裕介
とうとう･･･とうとうこの日が来てしまった。
相変わらず現実感がないのに、哀しいくらい雨上がりの空は青くて。
ホテルから劇場への道すがら、空を見上げてひとり苦笑い。
泣いても笑ってもこれが本当の最後。
それでも舞台はいつも通り、本当にいつも通りに始まりました。
（いや、当たり前なんだけどさ^^；）
楽と言うことで、アツクてもっとパワフルなカンジになるかと思いきや、意外と落ちついていて。
セリフのひとつひとつ、小さな動作のひとつひとつを大切に、その一瞬をいとおしむように
皆さんが丁寧に演じられていた舞台だったと思います。
ハンニバル〜Think of me
河合カルロッタのThink of me から、しみじみしてます。
２フレーズ目の「どうぞ〜あたたかい･･･」途中で終わらないバージョンで聴きたい（笑；）
いつもより、少しだけ台詞回しに力がはいってたような気がします･･･我がプリマドンナ。
やわらかであたたかい色のスポットを浴びた村田クリスは･･･セピア色に染まった一葉の
写真のようで、劇場自体が過去の夢を見てるようでした。
あ、でもそうなんだよね。オークションから時代を遡っているわけなんだから、これも
夢のひとつなのかもしれない。
リトル・ロッテ。
柳瀬ラウルのセリフが、すんごいデ・ジャ・ヴ。
「クリスティーヌ・ダーエ･･･君の赤いスカーフはどこへやった？」
10周年記念盤の時の台詞回しとかなりよく似てて（笑；）
一瞬、「CD聞いてるのか？」と思ってしまったくらい。
The mirror。
ため息しか出ないくらい優しい･･･ひたすらに優しい「ブラヴァ」。
いつぞやは地の底から響いてくるような「ブラヴァ」でしたが、今日は
天上から聞こえてくる天使の祝福でした。
The phantom of the opera
村田さんの声力（こえぢから、とお読みください）がすごかったように思ったんですが。
ここって初めの方はテープだとずっと思ってたんだけど、今日は違うの？ってなくらい。
The music of the night。
自分の力を余すことなく出した歌い方･･･なのかな？
オハズカシながら、見る側にかなり力が入っちゃってて表現ができない（笑；）高井さんの歌い方は、そのときによって流れが変わっちゃったりするんですが
今日も少し「心のおもむくまま」だったように感じました。
いやでもイイ意味で、なんですが。
自分の身体の中に流れる「音楽」を大事にしていたような気もします。
豊かに響く声が天を駆けたかと思うと、足下をひそやかにとりまいて。
ま、ある意味ここがイチバン彼−ファントム−のシアワセなトキ。
あとは坂を転がり落ちるだけだしな（爆；）って、最後の最後にそれかよ･･･自分（泣；）
イルムート。
今日の村田セラフィーモはいつもどおりに戻られて。
アーチ上のファントム、出ては隠れるのがいつもより早かったかな？
「随分とキレのいいことだな」（笑；）
さすがにこの席では勘違いできず･･･ちっ☆
でも、ここのキレてるファントム、やっぱり好きですわ。
All I ask of you
こう･･･張り詰めっぱなしだとどっかでぷっつり気が緩んじゃうんですよね。
ちょうど、ここがそれだったかもしれない（苦笑）
パニック寸前感情爆発なクリスとそれをなだめるようなラウル。
現実と非現実に引き裂かれ壊れてしまいそうなクリスの精神状態をなんとか守りたい、
両手を広げてなにかから彼女をかばっているような、そんなラウルがいたように思います。
天使像は･･･パワー炸裂だったなぁ。
耳をふさぐときに顔すら隠しちゃって顔見せなさいよ、ってなカンジでしたが
その頑ななまでの拒絶ぶりが彼のダメージをあらわしているようでしたね。
幕間の休憩時も異様な熱気がロビーに渦巻いてましたね（苦笑）
今日も、いろいろな方とお会いできております。
２幕・マスカレード。
楽だというのに、なんだか身の入らない自分に少々焦りと戸惑いがあったのですが･･･
ここで魔法をかけられてしまった気分。
忘れよう忘れよう これはひとときの夢
日々のうつろい仮面に隠して いまは踊り飲みあかそう
心を締め付けていたタガのようなものが一気に外れて･･･１度目の号泣。
ただただ、説明のつけられない幸福感でいっぱい。
今ここで死んでも悔いはまったくない･･･ってアンタまだ言うか。
華やかできらびやかな夢のかけらが、そここで光って華やいで。
できることなら一緒になって踊り、笑いさざめきたい（笑；）
「墓場にて」
自分に言い聞かせるように歌っているクリスに、かなり感情移入してしまいました。
「明日生きる力を与えてほしい･･･この苦しみ悲しみに別れを告げるために･･･」
どうぞ、力をあたえてください･･･ワタシにも（泣；）
The point of noreturn
魂をからめとるような力強い誘惑。でもその中に潜むのはひたすらな懇願。
村さんよりも高井さんに、痛いほどの「懇願」を感じるのはなぜなんでしょう。
「願えばかなうかもしれない」ではなく「かなわないけど願わずにはいられない」
その心の中の深淵にいったい何を隠しているのか。
見てみたいと思いつつ、誘惑に負けて見てしまった瞬間から激しい後悔に苛まれるような、
そんなモノを彼自身も持っているのかもしれない･･･そう、ファントムの素顔みたいな（笑；）
その懇願こそが、逆に相手を退かせてしまうとも気づかず、手を伸ばして･･･
クリスはどんな思いで仮面をはがしたのか。
そう、もはや戻れない･･･
最後、椅子に座り、力なくうつむくファントムの姿。
その背中に、痛々しいほど折れ曲がってしまったグレイの翼が見えたような気がしました。
「クリスティーヌ･･･I Love you」
「you･･･」で、ちいさくうなずきながらクリスの手をとって。
指輪も、想いも受けとってもらえはしなかったけれど
せめて、この言葉だけは受け取って欲しい。
求めるばかりだった彼が、彼女へ初めて贈った愛の言葉。
こう、自分の血を固めて作った薔薇のようで。（恥ずかしい物言いは百も承知さ〜^^；）指輪は返したけれど、眼には見えないこの薔薇を差し出されて。
きっと彼女は、そっと受け取って去っていったに違いない。
ああ、よかった･･･と思わせるものがありました。
そして･･･カーテンコール。
３度目くらいに登場したラウルは、きちっとテイルコートを着ていて。
おっ？と思った次の瞬間。
オーヴァチュアが鳴り響き･･･天使像が降りてきました。
ここで、とうとう涙腺ぶっ壊れました。
いつもより低めに下がった天使像が再びするすると上がり、シャンデリアは妖しくきらめいて。
オープニングと同じように緞帳がするすると上がって、また過去へと戻っていきます。
すべてがふたたび初めに戻ったらどんなにいいか。
最後に登場したのは、スモークの海の中、アンサンブルのバレリーナを先頭に集合したキャストたち。
あまりに綺麗で夢のようにせつない･･･そう、再び「マスカレード」が始まったのです。
泣くと舞台がぼやけてしまうから泣きたくない、しっかりと目に焼き付けたくてしょうがないのですが
涙腺はまったく言うことを聴かず。
悔しいことに、ここでの配列はまったく覚えてません。
アンサンブルの脇から、どんどん、通常のカーテンコールのようにキャストたちが前に出て、
最後に主役の３人が手を前にふわっと伸ばしながら登場します。
高井ファントムの伸ばされた手の美しかったこと･･･綺麗に反った指しか覚えてない（爆；）
上からするすると大きな看板が下りてきて。
「１４ヶ月ロングラン達成 ありがとう京都 オペラ座の怪人 千秋楽」
「興行が難しいといわれてきた京都で１４ヶ月というロングラン公演が実現できたのも、
地元の皆様をはじめ、皆様方の温かいご支援の賜物です。
京都公演が決まりました時、これほどのロングランが実現するとは誰も予想していませんでした。
京都は古くから日本文化の中心地。お客様に感動していただける舞台を作れば必ず成功できると
信じて公演してまいりました。
“オペラ座の怪人”は今日お別れいたしますが、今後も京都劇場を拠点として様々な作品を上演
してまいりたいと考えております。変わらぬご支援をよろしくお願い申し上げます。」
こんな内容だったかな？
深見ルフェーブルのご挨拶でした。
今回が関西で７年ぶりだったわけで、次回は･･･考えるのよそう（泣；）
拍手は鳴り止まず、何度も何度もカーテンコールが繰り返されました。（新聞記事には15回とあったそうな）
最後、主役３人がひとりづつ登場した際、高井さんへの声援がすごかった。
「高井さーん！」
「高井さん、ありがとーっ！」
「おさむーっ！！」
･･･おさむって、アナタ･･･（笑；）
おじょうさんがたの黄色い歓声に、ちょっととまどっちゃった高井さん。
ファントムの仮面の下から、素の高井さんが見えちゃってましたね。
もすこし舞台にいて、手でも振ったほうがいいのか、それとも袖にはけちゃおうか･･･むぅ☆
そんなことを考えてたのか、ちょっとステップ踏みかけてしまったその姿のかわいいこと（失礼；）
客席からもあったかい笑いがこぼれてましたね。
最後の最後まで拍手は本当に鳴り止みませんでした。
最後に、舞台に触れてお別れがしたくて、最前列へ向かいました。
ふと、立ち止まってプロセニアムアーチを見上げたら･･･それだけでもう、どうしようもなくて。
結局、触れもせずに逃げ出してしまった自分がちと情けない。
ひと段落ついたあと、顔を見たら･･･見事にきれーさっぱりアイメイクがとれてました（苦笑）
１６：３０頃から招待公演が始まるとのことで、もしや･･･と他の方々と行きましたら。
なんとモニターを出してくださったんです。あたくしゃさすがに招待公演のモニターはないだろうと
思っていたのでびっくり。時間ギリギリまで頑張っちゃいました。
愛しいマスカレードまで粘って、特急へ乗るべく駅へ向かったんですが。
改札通った瞬間に、またえぐえぐ泣きかけのお馬鹿が約１名。
次に来たとき、あのアーチも看板もなくなってると思うと･･･もうダメでしたね☆
涙を拭き拭き並んだ特急待ちの行列で
「かわいそうに、恋人と別れでもしたのかしら？」
という隣ののオバサマがたの目がちと･･･いやかなり痛かったよ（笑；）
そのあと同じ車両の通路はさんで隣に座ってるし･･･席に余裕があったらちと逃げたかった。
･･･ああ、後ろ髪ひかれながら別れてきたところですとも、愛しいファントムとねっ（爆；）
すでに楽から１週間経過しているのに、こうやってキーを打ってるだけで
じんわり涙があふれてくる自分に驚いてます。仕事の忙しさでかなり気がまぎれていたものの
ダメージはかなり深かったようです。
はまるのが遅かったことが悔やまれることもあるけど。
６月からの８ヶ月間、21回の観劇。
回数や年月ではない、大事なのは自分の心ひとつ。
この作品に出逢えて、愛することができて本当に良かったと思える自分がいます。
今はまだ、ながいながい夢の終わりに涙し、痛みを覚えることしかできないけど。
ありがとう。
さよならはまだとても言えないけれど、本当に嬉しい。
端から見たらあまりにバカバカしくて愚かな行為だったかもしれないけど、
わたし自身はひたすら幸福な８ヶ月でした。
ありがとう、またいつか･･･どこかでお逢いしましょう。
いつぞやの高井さんのメッセージの通り、いつでも心の中にはファントムがいる。
思えば、呼べばすぐに現れるのです。
わたしの心の中にすむ、愛しいあの魔物が。
今はただ･･･すべてに感謝をこめて。
…観劇の部屋へ