…創作の小部屋・２へ
Speak Low
Speak low when you speak love
Our summer day withers away too soon,too soon
Speak low when you speak love
Our moments is swift like ships adrift,we're
swept aprt too soon
Speak low darling,speak low
Love is a speak lost in the dark too soon,
too soon
I feel wherever I go
That tommorow is near, tommorow is here and
always too soon
Time is so old and love so brief
Love is pure gold and time a thief
We're late, darling, we're late
The curtain decends, ev'rythings ends too
soon, too soon
I wait darlIng, I wait
Will you speak low to me, speak love to me
and soon...
愛を語るには 低い声で ゆっくりとそれは、夜の闇を縫って甘い花の香りがあたりにただよう初夏の宵。
遅くなることを告げて出かけたものの、予想以上に遅くなってしまったことに
少々あせりを感じながら、地下へと続く道を歩く。
待たないようにとは言ったものの、あの宵っ張りは･･･おそらく起きているだろう。
昼夜の意味がないとはいえ･･･いや、だからこそ生活に対してある程度は
規則正しくしてほしいものなのだが。
脇に抱えていた包みを抱えなおす･･･まぁ、いい。
できれば早いところこれを見せて、驚く顔が見たい。
幾筋もある地下道を最短距離で通りぬけて我が家へと辿りつく。
ドアをあけてそっと身体をすべりこませると、案の定、居間のいつもの場所に彼女はいた。
･･･が。
よく見ると、眠っているようだ。
膝に置いてただろう本は滑り落ち、クッションに寄りかかって
気持ち良さそうに寝入っている。
普段なら、部屋に私が入ってきたその気配だけで目を覚ますのだが、眠りが深いのか
起きる様子はまったくない･･･珍しい。
マントと帽子を椅子に置き、脱いだ手袋を帽子の脇へ投げると、そっと彼女の元へ近づく。
横に腰を下ろしてもいっこうに目を覚ます気配はない。
声をかけようと思ったが･･･ふと、このまま彼女が目を覚ますまで待ってみたい気分にかられ る。
誰かのやすらかな寝顔を、傍らでじっと見守るような日が来るなどと･･･誰が想像できた だろう。
望んだところで叶いもしないとあきらめていたものが、いともあっさりと･･･しかも奇妙な
出来事を通じて手に入ってしまった。
夢ではないのだろうかと幾度も思った。
夢にしてはなかなか醒めないまま、数ヶ月がすぎようとしている。
･･･いや、私の頭などとっくにおかしくなっているのかもしれない。
あの、豪奢にして砕かれたガラスの上を歩くようなマザンダランの日々。
暑くけだるい空気と、おびただしい血の匂いと･･･
そこから逃れるために、幾度となくあの国の背徳･･･阿片やモルヒネを用いたのも
数回などというなまやさしいものではない。
今でこそ、回数はかなり減っているものの･･･とっくに蝕まれていてもおかしくはないのだ。
彼女が現われてからは不思議とそれらに手が伸びる回数もかなり減ったが･･･実際には
阿片の見せる夢を、寝ても覚めてもずっと見ているだけなのかもしれない。
ふいに、彼女が身体を動かした。
寝返りをうつように身体をむけると、傍らのクッションに倒れこむように身を預ける。
その様子は、まるで誰かの身体に甘えるようにしなだれかかったようで思わず息を飲む。
私のような者と二人きりでいることに不安を覚えたりはしないものか。
ここでの毎日を過ごし･･･この状況を楽しんですら見える彼女を見ると
時折聞いてみたい衝動にかられる。
なぜ、そんなにも平気なのか。
そして、共に過ごす私という存在を･･･いったいどのように思っているのか。
恐れもなく私を見つめ、この手に･･･顔にすら触れて。
私はごく普通の人間なのだと…錯覚してしまうほどに彼女は私の心の中にすら
入りこみはじめている･･･だからこそ、真意が知りたくなる。
しかし、聞いてみたいと思う自分にもうひとりの自分が冷たく尋ねる。
聞いたところで返ってくる答えなどわかりきっている。
よもや、お前は都合のよい答えを期待してはいないだろうね？
この時代の常識には捕われない彼女に、お前はなにを望もうとしている？
彼女にとっては、年老いてみすぼらしい哀れな犬にやさしく接しているのと同じことさ。
望んでなどいない･･･なにも。
それは、突然やってきたように、いつか突然帰るかもしれない彼女に足枷をつけるようなものだ。
軽率なひとことで、軽率な振る舞いのひとつで、今の不思議と穏やかな･･･
午後のまどろみの中にいるような日々は終わりを告げるだろう。
やがて･･･「その時」は来る。
終わりの来ない舞台はない。
必ず最後には幕が降りるのだ･･･終わってほしくないときほど早く、無情に時は過ぎゆく。
たわいのない会話の中の一言。
何気なく触れられた手のぬくもり。
かけがえのない一瞬でさえ、次の瞬間にはもはや「過去」となりはてる。
「明日」は必ずやってくるが、それが望むとおりの「明日」であると誰が言えるだろう？
愛を語るには低い声で･･･ゆっくりと。
そう歌ったのは誰だったか。
ふと頭の中に浮かんだワンフレーズに思わず苦笑が浮かぶ。
愛･･･だって？
おおよそ私には縁のない言葉･･･のはずだが。
そっと･･･低い声でゆっくりささやく。
「起きなさい･･･そのままでは風邪をひく」
まつげがふとゆれて、瞳がゆっくりとひらかれる。
私の姿をとらえた瞬間、ぼんやりとした表情は
ゆっくり笑顔にかわって。
「･･･お帰りなさい」
その一言にどれだけ私が幸せを感じるか･･･
きっと君にはわからないだろうし、決して知られたくはない。
愛を語るには低い声で･･･ゆっくりと。
そんな日が来ることはあるのだろうか？
今はただ、このままでいい。
そう･･･もう少し、このままで。
愛を語るには 低い声で ゆっくりと
わたしたちの過ごす一瞬は早すぎる
波に漂う小船のようにあっというまに流され、離れ離れになってしまうだろう
愛しいひとよ、愛を語るには低い声で･･･ね。
愛は闇の中の一瞬の火花のようにきらめいて･･･去っていく
どこへ行ったとしても「明日」はきっと近くに･･･ここにある。
そして･･･あまりにも早くこの手をすり抜けていく
時間が降り積もっていく中で 愛はほんの短い一瞬のこと
愛は純金 時はそれを盗んでいく泥棒
愛しいひとよ やがてわたしたちは離れる時がくるだろう
幕が降りるのだ･･･すべての終わりはあまりにも早くやってくる
愛しいひとよ わたしは待っているよ･･･いつまでもね
きみが低い声で語ってくれるのを待とう
わたしに真実の･･･愛を伝えてくれることを。